SEMINAR
2018.11.08
第24回LaMer特別講演会「琵琶湖・大阪湾におけるマイクロプラスチック汚染の現況とペルフルオロ化合物類との関係」が10月30日(火)に開催されました。
多数のご参加ありがとうございました。
日時: 2018年10月30日(火) 13:00~
場所: 理学部 総合研究棟Ⅰ 6階会議室
演題: 琵琶湖・大阪湾におけるマイクロプラスチック汚染の現況とペルフルオロ化合物類との関係
講師: 田中 周平
京都大学大学院地球環境学堂
要約:近年、マイクロプラスチックによる環境汚染が注目されており、生態系への悪影響が懸念されている。負荷源としては、1)環境中に投棄されたプラスチックゴミが紫外線によって小片化すること、2)日用品中のプラスチック粒子が洗い流されて下水処理場で完全に除去されずに環境中に排出されることなどが予想されている。
プラスチックは疎水性のため、疎水性の化学物質を吸着しやすいと想像される。2011年に世界の漂着プラスチック片(10 mm未満)から多環芳香族炭化水素類(PAHs),ポリ塩化ビフェニル(PCBs),ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT),ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)などの疎水性化学物質が検出された(Takada et. al., 2011)。また、新品ペレットを海水に浮遊させると、時間の経過に伴いペレットのPCBs、PAHs含有量が上昇すると報告している(Mafuji et. al. , 2002)。上述のように、水環境中のマイクロプラスチックから様々な化学物質が検出されているが、同一マイクロプラスチック試料に対する多種多様な化学物質の吸着特性を検討した事例は少ない。
マイクロプラスチックへの化学物質の吸着を議論する場合、粒径分布が大きく寄与すると考えられる。すなわち、マイクロプラスチックへの化学物質含有量を相対的に比較するためには、同一のサンプルを同一の抽出方法で分析することが重要となる。
発表者らは2015年から琵琶湖・大阪湾におけるマイクロプラスチック汚染の調査を行っており、今回、マイクロプラスチックに吸着した発がん性が強く疑われるペルフルオロ化合物類(PFCs)とPAHsを同時分析する前処理方法を検討し、さらに塩素化PAHsについても分析を試みた。ハロゲン化PAHsは構造内に塩素や臭素などのハロゲン基を有しており、一部のハロゲン化PAHsはAmes試験において親物質よりも強い変異原性を示すと報告されている。加えて、排出源のひとつとしてパーソナルケア製品に着目し、その中のマイクロプラスチックおよびPFCs含有量について調査したので報告する。